稽古と修行

今 私が思い出せる子供の頃の記憶はほとんどバレエのことばかり。友達と遊んだ記憶もそこそこ、家族旅行もそこそこ。中学高校の頃と言えば、バレエ以外に・・・母に連れて行ってもらったアメリカへの家族旅行でも毎日レッスンをしてから、ちょっとお出かけ。
自ら選んで進んだ留学先では、ほぼ毎日10時間近いレッスンカリキュラム。
あの頃はよく逃げ出したくて、色々とぶつかりました。

でも今では、その逃げ出したかったバレエの世界にどっぷりつかっていて。


私は大人になって一つだけ、なかなか人に出来ないことをしていることに気が付いた。
それは今 現在30年近く、バレエを続けていて、一度も辞めなかったこと。

他のことはほとんどそこそこで来てしまった私にとって、唯一の誇りです。

毎日のように怒られ・・・おっと!表現が悪いですね。指導を受け・・・私生活のことでもよく指導を受けました。

人を感動させられるダンサーになるためには、きちっとご挨拶ができ、身なりもきちっと、言葉遣いも、人に気を遣えなければ、足を広げて歩かない、出来なくて泣く前に出来るまで練習、生活・性格 全てが踊りに出る・・・
伝統芸能がもつ神秘の部分は、弛まぬ人の努力が創り出したものだと・・・

最初は趣味で始めたバレエが生涯のものに変わったのは、いつだったのだろう?


今 生徒をもって思うこと・・・
皆が皆プロのバレエダンサーになれれば、とは思わない。
ただ、伝統芸能の持つ継続の力、自分と向かい合うことで得る強さ、教科書のないかたちを習得する目、分析力、応用力、美しいものを美しいと思える心・・・何か一つでも身につけてくれれば、私達と出会ってくれてよかったと思う。


でももしバレエを生涯のものにしたいと思う子がいるならば、覚悟して欲しい。
稽古は修行の場である。

兄が先日言った言葉を借りると・・・
人は皆 平等じゃない。だけど24時間と言う時間だけは平等なんだ。その24時間をどう活かすか。


1のものを2にするのも3にするのも、自分次第だから。


吉本真由美